子供の自閉的世界と親の関わり方について

自閉傾向のある人は、独特の自閉的世界を持っているとよく言われます。

この自閉的世界のことを「自閉的ファンタジー」と言うこともありますが、この自閉的世界とはどういうものなのでしょうか…自閉的世界を持つ子供に対して親はどう関わればよいのでしょうか…息子の事例を振り返りながら考えてみたい思います。

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自閉的世界と単なる空想との違いとは?

自閉的世界や自閉的ファンタジーというと、その子だけに見える幻想的な美しい世界をイメージしますよね。そのような世界を持っているお子さんも沢山おられるようです。

ですが、息子に関しては、そのような美しい幻想的な世界を持っているようには見えず、つまり、ファンタジー度は低く、かなり現実世界に近いけれども独特の感覚の世界という感じです。

つまり、自閉的世界もその人それぞれ、千差万別です。

一方で、定型発達の人も空想したり物想いにふけることはあります。このような通常の空想世界と自閉的世界とはどのように違うのでしょうか。

息子を見てきて感じたことを挙げてみます。

現実と非現実の混同(リアル度の高い空想世界)

息子は、3歳、4歳頃から、ぬいぐるみのトン君、チン君と一緒に遊びながら、そばにいる私に「トン君は今なんて言ってる?」「チン君は今なんて言ってる?」と1分に1回ずつくらい何度も何度も尋ねてきました。回数は減りましたが、この傾向は今もあります。

「パラッコはなんて言ってると思うの?」と尋ね返すと「いや、ママが言って!」と要求してきました。

通常、子供が人形遊びをするとき、子供はその人形遊びが現実世界とは切り離された自分の空想世界の中で行われていることをある程度認識し、人形の感情は子供自身が想像したり想定したりしますよね。

ですが、息子の場合は、自分の人形遊びの世界が自分の空想世界で行われているという感覚が薄く、現実世界と混同して、母親にも人形の声が聞こえているという風に勘違いしていたのではないか、と思うのです。

あるいは、自分の空想世界を現実の世界であると感じたい気持ちが強すぎて、母親に何度も何度も確認していたのではないか…とも思えます。人形が所詮『人形』であることは分かりつつも、心や感情を持つ存在として立ち上がらせたかったのかもしれません。

いずれにしても、頭の中で描く世界が外にあふれ出して現実の世界と混ざり合ってしまう…そんな傾向があるように思えます。

また、誰でも空想することはありますし、空想癖の強い人もいますが、息子のようなタイプは空想の世界と現実の世界の区別が曖昧で、かなりリアルな空想の世界を持つようです。

このようなリアルな感覚は、夢のような美しいファンタジーの世界だけで起きるぶんには問題ないでしょうが、恐怖や不安の世界で起きると問題となり得ます。

息子のさまざまな不安症・恐怖症は、空想世界をリアルに感じやすいことと関係があるように思うのです。頭の中で抱く不安や恐怖が、幻覚や幻聴のようにリアルに感じられてしまう…。

つい最近も、風嫌いの息子を慰めながら強風のなか歩いていると、突然「わー!怖かったー。目の前のマンションが倒れてきたように見えた。」と言ったのです。そして、じーっとマンションに目をこらし、何度も「倒れてきてない?倒れそうじゃない?」と私に確認してきたのです。

きっと、工事現場のそばを歩くときも、風で揺れる木を怖がっているときも、私たちが想像するよりもはるかにリアルに恐怖を感じている可能性があるのでは…

意識が現実世界に戻りにくい

自閉的世界に意識が飛んで行ったあと、現実世界に戻りにくい傾向があるように思います。

通常、人が何かを空想するときは、空想が自分の頭の中だけの非現実の世界であることを認識できているので、自分の意思により、あるいは、何らかの外部からの刺激によって現実の世界に意識を戻すことができます。

ですが、自閉的世界を持つ子供は、なかなか現実世界に戻ってきません。
確かに、子供であればだれでもこの傾向はあります。周囲が見えなくなるほど何かに意識を持って行かれることは子供の得意技ですもんね。ですが、定型発達の子供たちは、現実世界と空想世界とを区別して、遅かれ早かれ意識を現実世界に引き戻します。

一方、自閉傾向のある子供は、現実世界のなかに自分の自閉的世界を引っ張りこんで維持しようとするように見えます。自閉的な世界に意識が残ったまま現実世界の中で振る舞うので、第三者から見て風変わりな行動や自己中心的な行動をしてしまうことが多くなるのではないでしょうか。常同行動や過集中とも関係あるように思います。

生身の人間に対してよりも人形や物に情が湧きやすい

息子は、2歳の頃には物や人形に対して「かわいそう」という情を抱く傾向を示していました。

なかなかお風呂に入りたがらない息子に、お風呂場に置いてあったゾウさんジョウロのことを持ち出して「ゾウさんが『パラッコくんが来てくれないと寂しいな…』って言ってたよ」というと急に態度を変えてお風呂場に飛んでいきました。

傘を道路にバンバン叩きつけながら歩くので「傘さんが痛い痛いって言ってるよ」と私が言うと、傘を叩きつけることをピタッと止めました。

お茶碗にこびりついたご飯粒を平気でそのままにして食事を終わろうとするのですが、「このお米はパラッコのお口に入りたくてわざわざ熊本から来てくれたのよ」と私が言うと、最後の一粒まで必死に取って食べようとしました。

ですが最近まで、母親をはじめ、周囲の人間に対して「かわいそう」という情を抱いている様子や態度を殆ど見せたことがありませんでした。自分より小さな子に対してもです。
心や感情を持っている人間の気持ちには気づきにくく共感しにくいのに、心や感情を持っていない人形や物に対して心をリアルにイメージして共感する…。(こういうところは確かにファンタジーな一面だと思います。)

そして、そういう人形や物を取り込んで自分の世界を築き上げる傾向があるのかもしれません。生身の人間(他人)は息子の思い通りには動かないし、息子が予期できない動きをしますが、人形や物は従順で息子の思い通りになるわけです。息子の感情をそのままぶつけたり投影することができます。そういったものにしか息子は関心がなかったのかもしれません。

そのため、息子の自閉的世界の中に取り込まれた人形や物たちは、息子の情の対象になる一方で、息子の思い通りの動きをする必要があり、息子の意に反した動きをすることは許されないようです。それは息子がワガママだからということではなく、息子だけの大切な世界を構成するものだからなんだと思います。

最近も、こんなことがありました。
息子がいつもと同じように寝る前にベッドの中で2体のぬいぐるみ(トン君、チン君)と遊んでいるときに、ふざけ過ぎてトン君、チン君を踏んずけたり投げたりしていたので、私が「そんなことしたら可哀そうでしょ?トン君、チン君も『いやだ、今日はママさんと一緒に寝る』って言ってるよ」と言って、息子からトン君、チン君を引き離して私の枕元に寝かしたところ、息子は謝るどころか、「トン君、チン君を許さない!」と言って本気で怒り、その後泣き出しました。トン君、チン君を枕元に寝かした母親に対してでなく、トン君、チン君に対して怒るのです。トン君、チン君に心があって自分の意思で息子から離れてママを選んだとでも本気で思ってしまうのか、取り乱したように怒り、泣き出しました。最後には「そろそろ許してあげる」と言って自分の枕元にトン君、チン君を寝かしていましたが…。

息子は、小2になる現在でも、トン君とチン君と一緒に遊ぶ時間が沢山ありますが、遊び相手はぬいぐるみだけではありません。なぜか、100円ショップで購入したブックエンドにも名前を付けて一緒に遊んでいます。

人生ゲームなどのボードゲームを学校のお友達とするときも、トン君、チン君と、このブックエンドも加えて遊ぼうとします。お友達は当然拒否しようとするのですが、そんなことお構いなしです。

自閉傾向のある子供が非現実の世界に没頭しやすい理由

理由は3つあると感じています。

現実世界にストレスが多い

自閉傾向のある子供は現実世界に多くのストレスを抱えやすい現状があります。そのために、辛い現実から逃れるために、どこかに意識を飛ばしたくなる(心理学でいうところの「解離」)場面が通常より多いことは想像できます。

自分の意識から辛い現実を切り離すために、何かに夢中になりたくなる、没頭したくなる場面が多いということかもしれません。

自己の意識の力が脆弱

自閉傾向のある子供は、自我が弱く、自己の意識の力が脆弱なので、非現実の世界(空想世界)に飛んで行った自分の意識をコントロールできず、いつまでも非現実の世界に浸りやすくなるのではないでしょうか。

通常は、非現実的な空想にふけっていても、現実世界に戻ってこれます。これは、現実世界と非現実世界を行き来する自分の意識を高次の脳がコントロールしているからです。ですが、子供、特に自閉傾向のある子供は、脳が未熟なので、空想の世界に飛んで行った自分の意識を引き戻す高次の意識がうまく機能せず、全人格で空想世界に入り込んでしまうこともあり、結果として、現実世界と非現実世界が曖昧になるのではないかと感じます。

子供は一般に空想世界に入り込みやすいものですが、成長と共に、現実と非現実を区別する力、自分の意識をコントロールする力がついてきます。自閉症児はこの成長に遅れが出やすいのかもしれません。

過敏な偏桃体の活動による脳の誤作動が起きやすい

これは全くの私見ですが偏桃体の過敏性、過活動により、脳の誤作動が起きて幻視が起きやすいのではないか・・・?と感じています。

通常、現実に存在するものを目で見たとき、目から入ってきた視覚情報が視床に入り、それが偏桃体、前頭葉へと伝わっていきます。ところが、偏桃体は、視床に非常に近接した部位であると共に、記憶を司る海馬にも近いため、記憶に基づいた情報が偏桃体から視床に逆入力し、視床で映像として再現されてしまうことがあり、これが幻視の原因であるとも言われています。

偏桃体が過敏で過活動であるほどこの誤作動は起きやすいらしいので、息子のように興奮しやすい偏桃体を持っていると、ちょっとした興奮で非現実の世界が映像化され、現実と非現実の区別が難しい状況が生まれるのかもしれません。

親の関わり方について

子供が安心できる自閉的世界は大切にする

自閉傾向のある子供にとって、自閉的世界は心の安定を保てる、あるいは心の安定を取り戻せる場所です。

ですから、子供の心を守るためにも、その世界を奪ったり、壊したりしないように、見守ることが何より大切になります。

子供が求めてきたら、親は一緒に子供の自閉的世界を楽しんであげるといいと思います。大人が付き合うのは結構(かなり…)大変なのですが、親が一緒に子供と同じ目線で楽しんであげれば、子供は親を心から信頼するようになります。

そして、信用できる親を介して、現実世界に意識を戻す練習もできます。

自閉的世界は大切ですが、現実世界に戻れるようにすることも大切です
できることならば、ファンタジーの世界に頼り過ぎないで、現実の問題は現実の世界で解決できる人に育ってほしいと思います。

そのためにも、子供の手を引いて現実と非現実を自由に行き来してくれる信頼できる親の手引きは非常に大切になるはずです。

現実世界の安心と楽しさを味わわせてあげる

現実世界にストレスを感じやすい子供のストレスを取り除いてあげることは、もちろん大切です。

ですが、さらに、空想の世界ではなく、生身の人間とのコミュニケーションや現実世界でしか味わえない楽しさや安心感を感じられるように導いてあげる必要もあると思います。

そのために、まずは、スキンシップです。肌の温もりを一杯一杯味わわせてあげて、生身の人間によって与えられる安心感を肌で感じさせてあげることが重要だと感じます。

そして、目を合わせた会話や、家族団らんの会話です。楽しい会話のやり取りをすることで、生身の人間とのコミュニケーションの楽しさを実感させてあげることは効果大だと思います。

もちろん、お子さんの特性によっては、スキンシップが図れない、目を合わせた会話ができない、など難しい場合もあるかもしれませんが、そんな場合でも「会話」(目を合わせられなくても)だけは続ける価値があると思います。目が合わなくても、目の高さを合わせて一杯一杯語り掛けてあげたり、家族団らんの中に置いてあげることで、安心感と楽しさを感じ取れると思います。

そして、この「スキンシップ」と「目を合わせた会話」「家族団らん」は、オキシトシンという愛情ホルモンの分泌を促し、このオキシトシンがセロトニンという神経伝達物質の分泌を促すという点でも重要な意味があります。

なぜなら、セロトニンは、前頭葉の発達、精神の安定に不可欠だからです。
次につながります⇓

前頭葉を鍛える

やっぱり、ここに行きつきます。このブログの根底に流れる課題です。

子供がファンタジーの世界・空想の世界を必要としている限り、その世界は大切にすべきだと思いますが、最終的には、ファンタジー・空想の世界に頼り過ぎないで生きていける人、あるいは、ファンタジー・空想の世界に入り込んだ自分の意識を自分のコントロール力できっちりと現実世界に引き戻せる人になってほしいと思うのです。

つまり、子供の意識の力を強くする、自我を強くする必要があるのですが、そのために、子供の脳に働きかけて前頭葉を鍛えることが効果的なアプローチだと思っています。

子供の前頭葉に働きかけるときのポイントについては、こちらの記事を是非ご一読ください⇒軽度発達障害児の脳に働きかけるときのポイント

そのなかでも、子供が自閉的世界に頼る割合を低くするために重要になるポイントは、次の2点だと思います。

  • 現実的な夢や目標を持たせ実現のための予定(計画)をたてさせる
  • セルフモニタリング力をつける

お子さんの年齢や精神発達度によっては、現実的な夢を考えたり、長期的な計画を立てることは難しいかもしれません。その場合は、「将来の夢」や「将来やりたい仕事」のような大きなテーマでなくても、「何か欲しいもの」「そのためにお小遣いをいつまでにいくら貯める」「なわとびを〇〇回飛びたいから毎日〇〇回練習する」といった日常的な目標と計画でもいいと思います。

そして、そのことについて家族で日常的に頻繁に会話することも大切になります。そうすることで、現実世界への興味を刺激しつづけ、空想世界から現実世界へと少しずつ比重を移していくことを目指しています。

セルフモニタリング力は、自分の考え、自分の行動、自分の感情を振り返って認識する力です。セルフモニタリング力がつくことによって、自己の意識力が高まり、現実と非現実を行き来する意識をコントロール力もついてくることを期待しています。そのためには客観的な視点や自己コントロール力が求められますので、発達障害の子供にはハードルの高い話かもしれません。ですから、少しずつ少しずつ、誘導しながら、まさに働きかけていくことになります。

セルフモニタリング力をつけるのに一番良い方法は日記だと思います。
日記が難しければ、会話の中で「今日は何が楽しかった?」など振り返りを促すような質問をしてみるといいでしょう。「分からな~い」「忘れたー」とはぐらかすかもしれません。もともと苦手なんですから。。。そんな場合は、「お母さんは今日は〇〇が楽しかったよ」など、親が自分の話をして聞かせることから始めてもいいと思います。サイコロを転がしながら、出た目に応じてテーマを選んで話すなど、某テレビ局のかつてのテレビ番組を真似てもいいと思います。

さらに、このような働きかけを続けることで前頭葉が鍛えられれば、偏桃体の興奮をコントロールする力もついてくるので、偏桃体の過敏性がやわらぎ、脳の誤作動を防ぐことにもつながると期待しています。

まとめ

自閉的世界は自閉傾向のある子供にとって大切な安住の世界なので、子供の心を守るためにも壊したり傷つけたりしないようにする必要があります。

ですが、自閉的世界と一般的な空想世界とは違います。

そして、自閉的世界に没頭しすぎる傾向は、現実社会で生きていくうえでの精神的脆さにつながる気がします。

自閉的世界を大切にしながらも、子供の生活の中で自閉的世界が占める割合を少しずつ減らしていき、自分で現実世界に意識を引き戻す力をつけさせることを目指したいと思っています。

そのために、親は、スキンシップや会話など、生身の人間だからこそ与えられる安心や楽しさを子供に一杯与えながら、前頭葉の発達を促す働きかけをすることが大切なのでは…と考えています。

これらを心がけながら、これからも子供の成長を支えていきたいと思います。

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